日々の身繕いでイツノマニカ体内に生成される毛玉のハナシ


by neko-dama
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

『ラブリーボーン』読んだ。

『ラブリーボーン』

原題:"The Lovely Bones"
著者:アリス・シーボルド Alice Sebold 片山奈緒美・訳
アーティストハウスパブリッシャーズ 2003年5月26日初版
アメリカで2002年7月に刊行され、二ヶ月足らずでミリオンセラーを記録。

 素敵な骨。それはむくむくと形成され年月を重ねる。折れても、より太く強く蘇る。まるでそれは絆だ。生きた絆。肉体を持った絆。この本の語り部は最初から死んでいる。スージー・サーモン14歳。学校の帰り道に近道をして、とうもろこし畑で殺された。レイプされて、殺されて、バラバラにされて、捨てられた。

 序盤はただただショックだ。著者自身レイプの被害者であり、その体験やトラウマの克服を綴ったノンフィクション"Lucky"を発表している。小説としてはこの『ラブリーボーン』が処女作だ。そういった背景を知ると、なぜ残酷な出来事に対してこんなに力強く冷静な描写ができたのかが少しわかる気がする。

 著者の背景を抜きにしても、純粋に読み物として面白い。死んだ少女が天国から家族を見守る。スージーの死を境に崩壊する家庭、自分もあんな風に辿るはずだった妹の成長、幼い弟の思い、父の犯人に対する執念、母の疲れ。そして一度だけキスをした少年レイの成長も見守り、自分を殺したアイツの行く末も見守る。

 スノードームの中のひとりぼっちのペンギンと同じ。家族やレイと共に生きられず、自分だけ別の世界にいる切なさ。だけど父が「大丈夫だよ、スージー。ペンギンは楽しんでいるさ。素晴らしい世界にいるんだから。」と言ったのと同じ。天国は素晴らしい世界だ。生きている家族の喜びは自分にもこの上ない喜び。どうか私の死を乗り越えて。ただ、忘れないで欲しいだけ。

 遺された人達それぞれの思いが丁寧に描かれ、またそれを見つめる天国のスージーの複雑な気持ちも描かれる。人物がいちいち魅力的だ。終盤の展開で、驚くことにスージーにはちょっとした救いがあった。遺された者達も力強く前進していく。一度折れて強くなった絆を胸に。もっとむくむく育つための骨を抱えて。

 ひとつだけ残念なのが、訳文がしっくりこなかったこと。直訳調の文章が多々見受けられ、日本語としては解りづらい表現になってしまっていた。加えて、現在と回想の区別がつきづらい文章で混乱させられた。段落を分けずに改行だけで回想から現在に戻ったり、現在から回想に入ったり。おそらく原文では文章ごとに時制が違うから問題ないのだろうが、訳文では時制が曖昧な文章なので特に前半は読みづらさを感じた。なるべくなら原文で読んだ方が良さそう。

 ところで、これは絶賛映画化中。指輪三部作や『乙女の祈り』のピーター・ジャクソン監督。お父さんにマーク・ウォルバーグ、リンお婆ちゃんにスーザン・サランドン。下のリンクは英語だけど、綺麗なスチル写真が載っているので見てみてください。

映画化の画像⇒ピーター・ジャクソンの『ラブリーボーン』スチール公開


映画版の感想はコチラ⇒ラブリーボーン 【愛すべき 絆を強く 時間かけ】 (猫の毛玉 映画館)
[PR]
by neko-dama | 2009-06-04 16:22 | 猫の図書館/美術館