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日々の身繕いでイツノマニカ体内に生成される毛玉のハナシ


by neko-dama
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アーサー王伝説。

私は無類のアーサー王好き。
イギリス文化圏並びにヨーロッパでは、誰もが子供の頃から親しんできたモチーフと言っても過言ではないでしょう。






この伝説を15世紀にうまく編纂したマロリー卿の『アーサー王の死』 は、ロマンチックな中世騎士物語として有名。
といっても、現代日本人の感覚からすれば不可解な「騎士道精神」と言う名の都合の良い言い訳に頭が痛くなるが。

怪物や敵として出てくるのは、実際は異教徒や侵略者や精神的あるいは肉体的にチャレンジされた人々の暗喩とも思われる。
騎士たちは相手の立場などお構いなしにコロしまくり略奪しまくるよ。かなり残酷で理不尽。

女性の扱いに関しては言わずもがな。
崇拝の対象、などというと聞こえは良いが、まるっきりモノとして扱われていて血が通っていない。
15世紀イギリスものなのだから仕方ないが。

さて、マロリー卿の偉業はそれはそれとして大変意義深く、アーサー王伝説の概略を知るには良い初級者向けの読み物だ。

アーサー王伝説のエッセンスは、あらゆるファンタジー小説、ドラマ、映画、ゲームに見つけることができるし、現在でもそれは生まれ続けている。
よく言われることだが、『指輪物語』のトールキンも多大な影響を受けていた。

この伝説の魅力は、マロリーがまとめたものの他にも無数のサイドストーリーが存在し、
また無数のまったく異なるストーリーも存在し、曖昧で矛盾に満ちた、想像力を刺激する題材という点にある。
これが真実のアーサー王物語だ!などとは誰にも言えないのだ。

そんな中、1997年から順次出版されたバーナード・コーンウェルの小説アーサー王物語3部作『エクスカリバーの宝剣』、『神の敵アーサー』、『エクスカリバー最後の閃光』は最高に好きなアーサー本のひとつだ。

それぞれが上下巻、つまりハードカバー6冊という構成。
リアルタイム読者の私は、話の続きが早く読みたくて出版元の原書房のクラブに入ったほど。
(新刊案内が届くのです)

この物語は、実在のアーサー(5世紀~6世紀に生きたブリタニアの戦士・指導者)に思いを馳せ、
歴史的考証も踏まえたものなので、アーサー王伝説を中世的な騎士物語としか解さない向きには苛立ちの元にしかならないかもしれない。
ケルト文化、ドルイド文化、サクソン人の襲来、ローマ帝国に見捨てられた属国としてのブリタニア、宗教、戦争といった泥臭い物語である。
5,6世紀という舞台設定のため鎧甲冑は粗野なものだし、優雅な宮廷生活と冒険の物語ではまったくない。(だいたい、5,6世紀は中世というよりは古代に近い)

昨年の映画『キングアーサー』も、歴史的背景に配慮した、実在のアーサーを描こうとするものだった。
あれはあれで、面白かった!登場人物それぞれがかなり薄く描かれてしまって残念ではあったけど。
もっと特定の人物に焦点を絞って掘り下げるべきでしたね。それでもランスロットとトリスタンは格好良かった。

閑話休題。
バーナード・コーンウェルのこのシリーズは、旅の途中に出会った英国人の一人が大好きだと言っていて、話が弾んだりもしました。

アーサー王伝説というと女性向けのファンタジーと思われがちですが、
このシリーズは特に男性にお勧めです。
熱い友情や、戦いの熱に浮かされた雰囲気がよく伝わってきます。
なにしろハードカバー6冊ですので読むの大変かもしれませんが、ぐいぐい惹きこまれてあっという間に読み終わりますから、ぜひどうぞ。
by neko-dama | 2006-04-07 21:25 | 猫の図書館/美術館