日々の身繕いでイツノマニカ体内に生成される毛玉のハナシ


by neko-dama
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生命とはなにか。

『生物と無生物のあいだ』福岡伸一

書評テレビ番組で見て読みたくなった1冊。
もっと踏み込んだものを期待していたのだが、その意味ではガッカリ。
全体として生命礼賛、ヒトが触れてはいけない領域もあるよねという戒め的な軸がある。
簡単に言えば、文才の有る科学者が書いた、分子生物学的な生命の存在論。
前半は人類がどうやってDNAを発見(認識)したか。
後半は生命とは何かを探る試み、と言って良いのかな。

細胞生物学に馴染みのない方々には、きっと新鮮で面白く感じるであろう。
少し齧っている私には物足りなさが残った。
というか、初歩的なことを誰にでも理解しやすく書いているから、しつこく感じた。
同じことを何度も繰り返しているのも邪魔に感じた。
逆に言えば、細胞だの分子だのを知らない人向けに書かれたもので、「難しそう」と敬遠する方々には手にとっていただきたい逸品。

この本の核心は第9章に集約されている。
他の章はオマケみたいなものだ。
なまじ文才があるばかりに、冗長な情景描写が続いてしまうのが残念。
科学者の業界裏話(ポスドクとか論文のベリファイとか)のようなエピソードもどうでもいいなぁと残念。
本のタイトルや煽り文句から受けるイメージとは、そこらへんが剥離している。
そういう余分を拭き取ってしまうと、本当に薄い本になっただろう。
でもこれを逆に言えば、文系頭の人にも読みやすいってこと。小説を読むように読める。
学者業界に興味がある人は、ちょっとそれを覗けるのが面白く感じるだろう。 

なんだか否定的なことばかり言って申し訳ない。
そうは言っても第9章と終章(第15章)の結論は大変に面白いですよ。
シェーンハイマーの提唱した概念(生命の動的な状態)を著者が更に発展させ、
動的平衡という概念で「生命」を説明しようとする。
そしてそれは魅力ある概念であり、納得させられる。

生命という何やら得体の知れないものが、本当に科学的メソッドで明らかになるものだろうか。
生命とはどのような物理現象であるのか。
誰もが疑問に思う。「生命」とは何か?
それは、とりもなおさず、「私」は何者であるのか?という哲学的問いと同義である。
「生命」という現象、ひとりのヒトとしての細胞のまとまり、この、継続した1個の自分。
これは何なのか。
どんなに明快に説明されたとしても、やはり不思議な歓喜と問いが湧き起こる。
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by neko-dama | 2008-01-21 12:23 | 猫の図書館/美術館