ヒストリアン。
2006年 04月 05日
●取捨選択物語。の続報。
続きのルートがもうひとつ増えました。こちらから読んでみてね。
さて、読み止しだった本を本日読了した。
『ヒストリアン』(The Historian)という題名で、
歴史学者が竜の秘密を探るヨーロッパ歴史ミステリーという帯のキャッチと、古い革表紙を思わせる装丁に惹かれて衝動買いした本だ。
まったく予備知識もなく、ほとんど立ち読みもせずに買ってしまったため、
読み進むうちにドラキュラについての本だとわかると嬉しくなった。
私は吸血鬼もの、またはドラキュラものが大好きだからだ。
ドラキュラには2種類の理解の仕方がある。
ひとつは、お馴染みの吸血鬼伝説の中のドラキュラ。
ブラム・ストーカーを皮切りにして、その後幾度も物語られた恐ろしい血に飢えた魔物だ。
ストーカーは東欧の民間伝承を基に吸血鬼を紡ぎだし、その魔物にドラキュラという名を与えた。
言わばストーカーの魅力的な創造物だ。
もうひとつのドラキュラ。
それはストーカーが名を盗んだ、歴史上に実在する15世紀ワラキアの暴君且つ英雄である
ヴラド・ツェペシュ(ドラクルの息子ドラキュラ)のことだ。
串刺し公として、自国の領民やオスマン帝国を恐れさせた血まみれの領主。
ツェペシュの数奇で残忍な生涯は『ドラキュラ公ヴラド・ツェペシュ』や『ドラキュラ伯爵-ルーマニアにおける正しい史伝』を参照されたし。
つまりドラキュラ伝説とは何の関係もない、オスマン帝国を向こうに回し追い返した歴史的英雄であり、残虐にも敵だけでなく自国の民まで(少なくとも2万人、と言われる)串刺しにした暴君だ。
ストーカーが名を拝借したがためにドラキュラ=吸血鬼という等式はもはや常識ともいえる。
その実、ヴラドと吸血鬼ドラキュラの間には何の関係もないのだ。
ここまでは、誰もが容易に辿り着けるドラキュラの真実だ。
さて、エリザベス・コストヴァ(Elizabeth Kostova)の紡いだ物語『ヒストリアン』では、実在のヴラドと伝説の吸血鬼ドラキュラが混ざり合う。
1930年代の冒険、50年代の冒険、70年代の冒険という3つの冒険が折り重なって、この上なくスリリングに仕上がっている。
そして、ヴラドの生きた時代についての歴史と想像、本の前書き(?)にあたる「読者へ」という序文から仕組まれた、現実と虚構のミックス感が素晴らしい。
読後の余韻もまた格別で、もっとヴラドについて知りたくなるし想像も膨らむ。
歴史ミステリーであり、ファンタジーであり、究極のドラキュラもの。
この物語が、既にソニー・ピクチャーズに映画化権を買われているのも無理はない面白さだった。
ハリウッド映画向けの題材ではあるが、この歴史と伝説の絶妙なミクスチャーを映画で再現できるとはまったく思わない。
そこはそれ、本と映画は別物として楽しむに限る。
続きのルートがもうひとつ増えました。こちらから読んでみてね。
さて、読み止しだった本を本日読了した。
『ヒストリアン』(The Historian)という題名で、
歴史学者が竜の秘密を探るヨーロッパ歴史ミステリーという帯のキャッチと、古い革表紙を思わせる装丁に惹かれて衝動買いした本だ。
まったく予備知識もなく、ほとんど立ち読みもせずに買ってしまったため、
読み進むうちにドラキュラについての本だとわかると嬉しくなった。
私は吸血鬼もの、またはドラキュラものが大好きだからだ。
ドラキュラには2種類の理解の仕方がある。
ひとつは、お馴染みの吸血鬼伝説の中のドラキュラ。
ブラム・ストーカーを皮切りにして、その後幾度も物語られた恐ろしい血に飢えた魔物だ。
ストーカーは東欧の民間伝承を基に吸血鬼を紡ぎだし、その魔物にドラキュラという名を与えた。
言わばストーカーの魅力的な創造物だ。
もうひとつのドラキュラ。
それはストーカーが名を盗んだ、歴史上に実在する15世紀ワラキアの暴君且つ英雄である
ヴラド・ツェペシュ(ドラクルの息子ドラキュラ)のことだ。
串刺し公として、自国の領民やオスマン帝国を恐れさせた血まみれの領主。
ツェペシュの数奇で残忍な生涯は『ドラキュラ公ヴラド・ツェペシュ』や『ドラキュラ伯爵-ルーマニアにおける正しい史伝』を参照されたし。
つまりドラキュラ伝説とは何の関係もない、オスマン帝国を向こうに回し追い返した歴史的英雄であり、残虐にも敵だけでなく自国の民まで(少なくとも2万人、と言われる)串刺しにした暴君だ。
ストーカーが名を拝借したがためにドラキュラ=吸血鬼という等式はもはや常識ともいえる。
その実、ヴラドと吸血鬼ドラキュラの間には何の関係もないのだ。
ここまでは、誰もが容易に辿り着けるドラキュラの真実だ。
さて、エリザベス・コストヴァ(Elizabeth Kostova)の紡いだ物語『ヒストリアン』では、実在のヴラドと伝説の吸血鬼ドラキュラが混ざり合う。
1930年代の冒険、50年代の冒険、70年代の冒険という3つの冒険が折り重なって、この上なくスリリングに仕上がっている。
そして、ヴラドの生きた時代についての歴史と想像、本の前書き(?)にあたる「読者へ」という序文から仕組まれた、現実と虚構のミックス感が素晴らしい。
読後の余韻もまた格別で、もっとヴラドについて知りたくなるし想像も膨らむ。
歴史ミステリーであり、ファンタジーであり、究極のドラキュラもの。
この物語が、既にソニー・ピクチャーズに映画化権を買われているのも無理はない面白さだった。
ハリウッド映画向けの題材ではあるが、この歴史と伝説の絶妙なミクスチャーを映画で再現できるとはまったく思わない。
そこはそれ、本と映画は別物として楽しむに限る。
by neko-dama
| 2006-04-05 19:06
| 猫の図書館/美術館