アーサー王は永遠に。
2008年 01月 08日
永遠の王 アーサーの書(上・下)
T.H.ホワイトのアーサリアン・レジェンド(アーサー王伝説)。
『永遠の王 アーサーの書』は4部構成になっているが、
幻の第5部「マーリンの書」が存在するのらしい。
残念ながら、私の持っている本には載っていない。
洋書"The book of Merlyn"をアマゾンしたので、そのうち読みます。
訳書は出ていないのかもしれない。原書房あたりが何とかしてくれないかな。
話のベースはマロリーの『アーサー王の死』に則っている。
しかしながら、キャラクターそれぞれの解釈は異なっているところが面白い。
例えば、ラーンスロットが醜男であったり、サー・ペリノアが滑稽だったり。
中には、自分の知っているアーサー王物語でのキャラクター解釈からズレていると不愉快になってしまう向きもいるだろうが、そこは”伝説”なんである。
舞台設定、話の筋、キャラクターいずれも如何様にでも解釈可能なのがアーサー王伝説の面白いところだと思う。
アーサリアン・レジェンドを知らなくても、物語として十分に楽しめるのも本書の魅力。
とはいえ、やっぱり少しは知っていたほうが何倍も楽しめるけど。
前半は突拍子もないファンタジーで、その奇天烈ぶりが非常に愉快。
魔術師マーリンは「時を逆に生きる」という無茶な設定で、本人でなくても頭がこんがらがるって。
あまり深く考えてはイケナイんだと思う、こういうのは。
あとロビン・フッドと親交を深めたり、動物の世界に潜入したりする子供時代のアーサーが描かれている。
中盤は、サー・ペリノアとサー・パロミデス&グラモアの掛け合いが秀逸。
ペリノアは前半でも出てきて、その人柄の良さと滑稽さを存分に発揮していたので
ペリノアが出てくるだけでなんだか楽しい気分になる。ヘイル!
そのペリノア王の友人、パロミデスの口調がまた独特。
サラセン人だから言葉が覚束ない、という演出なのか、いちいち台詞が面白くてたまらない。
「あなたの真実の友、腹になります。そうして以下のような声を出します。」
これは、クエスティング・ビーストに仮装しようと提案したパロミデスの言葉。
覚束ない言葉を笑っちゃいけないけど、何とも言えないおかしみがあるのだ。
物語が終わりに向かうにつれ、マロリーのように悲壮になっていく。
奇天烈さはなりを潜め、アーサーその人が引き起こした悲劇へと流されていく。
アーサリアン・レジェンドの肝はモルドレッド(モードレッド、ミルドレッドとも)の存在だろう。
モルガン(モーガン)とアーサーの許されぬ息子である。
この悲劇の柱のために王国は滅ぶのだ。
バーナード・コーンウェルのアーサー3部作でも、形を変えて、そこは踏襲されていた。
ホワイトのライフワークとも言える本書は、マロリーを楽しく書き換えただけではない。
戦いの意味を人に考えさせる小説でもある。
割合に正統派のアーサリアン・レジェンドであり、読みやすいので、アーサー始めにも良いかもしれない。
本書を読んだ後、マロリーを読むのも良いし、ジェフリーやクレティアンを流し読むのも良い。
コーンウェルの3部作はかなり異色だけれど最高に面白いので、自分の中のキャラクター解釈が壊れても気にしない向きにはお勧め。
あと男臭くてハードで洗練されていない時代が好きな方にもお勧め。
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訳書は出ていないのかもしれない。原書房あたりが何とかしてくれないかな。
話のベースはマロリーの『アーサー王の死』に則っている。
しかしながら、キャラクターそれぞれの解釈は異なっているところが面白い。
例えば、ラーンスロットが醜男であったり、サー・ペリノアが滑稽だったり。
中には、自分の知っているアーサー王物語でのキャラクター解釈からズレていると不愉快になってしまう向きもいるだろうが、そこは”伝説”なんである。
舞台設定、話の筋、キャラクターいずれも如何様にでも解釈可能なのがアーサー王伝説の面白いところだと思う。
アーサリアン・レジェンドを知らなくても、物語として十分に楽しめるのも本書の魅力。
とはいえ、やっぱり少しは知っていたほうが何倍も楽しめるけど。
前半は突拍子もないファンタジーで、その奇天烈ぶりが非常に愉快。
魔術師マーリンは「時を逆に生きる」という無茶な設定で、本人でなくても頭がこんがらがるって。
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あとロビン・フッドと親交を深めたり、動物の世界に潜入したりする子供時代のアーサーが描かれている。
中盤は、サー・ペリノアとサー・パロミデス&グラモアの掛け合いが秀逸。
ペリノアは前半でも出てきて、その人柄の良さと滑稽さを存分に発揮していたので
ペリノアが出てくるだけでなんだか楽しい気分になる。ヘイル!
そのペリノア王の友人、パロミデスの口調がまた独特。
サラセン人だから言葉が覚束ない、という演出なのか、いちいち台詞が面白くてたまらない。
「あなたの真実の友、腹になります。そうして以下のような声を出します。」
これは、クエスティング・ビーストに仮装しようと提案したパロミデスの言葉。
覚束ない言葉を笑っちゃいけないけど、何とも言えないおかしみがあるのだ。
物語が終わりに向かうにつれ、マロリーのように悲壮になっていく。
奇天烈さはなりを潜め、アーサーその人が引き起こした悲劇へと流されていく。
アーサリアン・レジェンドの肝はモルドレッド(モードレッド、ミルドレッドとも)の存在だろう。
モルガン(モーガン)とアーサーの許されぬ息子である。
この悲劇の柱のために王国は滅ぶのだ。
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戦いの意味を人に考えさせる小説でもある。
割合に正統派のアーサリアン・レジェンドであり、読みやすいので、アーサー始めにも良いかもしれない。
本書を読んだ後、マロリーを読むのも良いし、ジェフリーやクレティアンを流し読むのも良い。
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by neko-dama
| 2008-01-08 13:57
| 猫の図書館/美術館